胎児が総肺静脈還流異常症と診断されてからの記録・メモ

2021-10-07 10:53:37 329

はじめに

妻のお腹の中にいる我が子が総肺静脈還流異常症(TAPVC)と診断された。
幸いにも突然の宣告ではなかったため、心の準備は出来ていたが、相応の覚悟が必要と判断。
今後同様の症例にぶちあたる人たちのためにも、自分が症例への理解を深め正しい知識を得るためにも、記録を残しておきます。

この記録を始めるにあたっての流れは以下のとおり。
  • 2回の体外受精により妊娠。
  • 19週0日目の4Dエコー検査時に、心疾患の可能性があることが告げられる(このとき兆候を発見できた技師さんは本当に優秀だったと思う)
  • 紹介状により、早急に別の病院で検査をすることになった。

  • ちなみに、兆候を発見できた病院は埼玉県の恵愛病院。


    2021年7月5日(19週5日目)

    埼玉医科大学総合医療センターにてエコー検査。



    詳細なエコー診断により、総肺静脈還流異常症(TAPVC)と診断。

    総肺静脈還流異常症(TAPVC)とは

    出典:http://www.miyagi-children.or.jp/shinryo/07/11/

    追記:↓もっとわかりやすい図があったので紹介。
    出典:https://www.byouin.metro.tokyo.lg.jp/shouni/section/pdf/des_pdf/des11.pdf

    つまり、発生の段階で心臓周りの血管がうまく形成されずに、肺で取り込んだ新鮮な酸素を全身に送ることができない状態
    新鮮な血液が、酸素の少ない血液と混ざった後に全身に送り出されるため、常に酸素が十分にない状態にある。

  • 一般的な新鮮な血液の酸素飽和度は98~100%
  • 静脈の酸素飽和度は60~70%

  • つまり、これらが混ざることにより、この疾患における血中酸素飽和度は単純計算で約80%程度となる。(合流する血液の割合によって差はあることに留意)

    つまり、今妻のお腹の中にいる胎児は、常に富士山山頂で生きていることと同じ状態にいる
    健康な大人でも高山病のリスクを抱えるレベルの環境にさらされていることになる。
    参考:富士山登山における心拍数,および自覚症状スコアの変化(2007, 関和俊、石田恭生、小野寺昇、田淵昭雄)

    こう考えるだけでも赤ちゃんはとても辛いことに耐えていることがわかり、涙が出てしまう。
    大抵の場合、胎児のときに診断がされることは少なく、ほとんどが出生後のチアノーゼや多呼吸がきっかけで心疾患が疑われるため、今回、出生前に診断されたことは幸運といえる。(しかも最初に疑ったのは医師ではなく、技師であった。)


    総肺静脈還流異常症の治療方法



    詳細は以下の方がより学術的・実践的で参考になる。

    ここでは、
    「総肺静脈還流異常周術期の最大の問題点はPVOである。」とある。これは肺静脈狭窄のことだが、詳細は後述。

    手術が可能な病院

    そもそも、心疾患の確率は出生児の1%と言われている。(https://www.jhf.or.jp/check/child/kazu/)
    さらに、肺静脈還流異常は、先天性心疾患の0.3-2%と報告されている。(https://www.shouman.jp/disease/details/04_46_058/)
    つまり、多く見積もっても全胎児の0.02%しか見られない希少な症例であるため、可能な限り経験・知見の豊富な病院での手術を行いたい。
    (我が子は妊娠確率40%を乗り越えた子なので、更に希少であると考えられる。したがって、この疾患の原因を探ることはほぼ不可能。)よって、親は「自分のどこがわるかったのか」などとくだらない自責の念にかられることはせずに、今後の対応策に集中すべきである。


    なお、都内における実績順は以下のとおり。(2021年7月時点)
    実績数では、800を超える榊原(さかきばら)記念病院が圧倒的。

    1 東京都 公益財団法人 日本心臓血圧研究振興会 附属 榊原記念病院
    2 東京都 東京都立小児総合医療センター
    3 東京都 東京女子医科大学病院
    4 東京都 東京大学医学部附属病院
    5 東京都 順天堂大学医学部附属順天堂医院
    6 東京都 国立研究開発法人 国立成育医療研究センター
    7 東京都 昭和大学病院
    8 東京都 日本赤十字社医療センター
    9 東京都 東京慈恵会医科大学附属病院
    10 東京都 慶應義塾大学病院


    なお、以下のように家族の滞在等が可能な施設もあったりするので、これも合わせて検討すると良い。


    上記の榊原記念病院であれば、以下のNPO法人ファミリーハウスを利用するのが良いだろう。


    以下のサイトでは、病院ごとにちかくのハウスを検索することができる。

    手術費用について

    もちろん、手術を受けて無事回復することが一番だが、心配なのがその費用である。もしかすると、たまに見かけた心臓移植費用のように、何億円と莫大な手術費用を工面する必要があるのではないかと不安になる。

    しかし、この症例においてはその心配は必要ない。
    幸いにも、手術費用は全て公費で賄われる。


    総肺静脈還流異常症の場合、下記に該当しそう。


    小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/)によれば、小児慢性特定疾病の対象疾病一覧にこれが掲載されている。



    ただし、これはおおむね18歳までの話。
    では、18歳以降に大規模な手術を受けることになった場合の医療費負担はどうなるのか。
    不安はつきない。

    例えば、以下の情報は参考になりそう。

    修復手術後の懸念事項

    肺静脈狭窄症(指定難病313)

    最も心配するべきはこの難病である。
    総肺静脈環流異常症の予後不良としておよそ10%で発症すると言われており、再発の頻度は高い。

    これが併発すると、一生付き合わなくてはならなくなる。

    出典:https://www.nanbyou.or.jp/entry/5401

    術後の生存率

    いざ出産後に手術を行い、無事成功したとしても、その後に死亡してしまうケースからも目をそらしてはいけない。

    新生児例、低体重児、術前からPVO(静脈狭窄)を呈した症例、下心臓型もしくは混合型、極端な左房狭小例、単心室症例の手術成績は不良であるが、様々な文献から整理すると、以下のようにまとめられる。

  • 術後の在院生存率:90%
  • 5年生存率:85%
  • 生後48時間以内の手術における生存率:90%
  • 手術児体重が2.5kg以下における生存率:70%
  • 術後に肺静脈狭窄をきたした症例の3年生存率:60%

  • 参考:(https://plaza.umin.ac.jp/~jscvs/surgery/4_16_syujutu_sinzou_souhaijoumyaku/、http://jpccs.jp/10.9794/jspccs.32.221/data/index.html)

    上記からもわかるように、出生時の体重をできるだけ確保しておくことが重要なポイントになるだろう。
    これはエコー診断を行った医者からも念押しされたことである。

    なお、以下のPVO(静脈狭窄)を起こさなかった場合は殆ど健康体での生活を送ることができることが、唯一の希望の道だろう。
    結論として、我々親は、術後にPVOを引き起こさない結果となることを願うしかない。


    術後の社会生活

    感染症予防

    手術を受けて間もない場合に、歯科医院での抜歯の際に心臓病の合併症の一つである「感染性心内膜炎」の予防のため、処置前に抗生物質の内服が必要と言われている。(https://www.hp.heart.or.jp/supportfamily/manabu/vsd/)

    成長期に合わせたサポート

    出典:https://www.hp.heart.or.jp/supportfamily/step-up


    相互扶助会

    自分はこういうものはあまり好まない方だが、精神的に煮詰まったり、不安が付きない方は相互扶助会への入会を検討するのもありだろう。
    ただし入会しなくとも、参考になる情報はたくさんあるので、ぜひ覗いておきたい。


    成人先天性心疾患と社会保障


    2021年7月11日 - 転院先の検討

    当初診断してもらった埼玉医科大学では、産科対応しているものの、心疾患の外科手術に対応していないとのことで、出生後の提携先への転院が必要とのことだった。

    そこで、担当医師からいくつか県内、都内の小児心臓外科手術に対応(NICU含め)している病院のリストをもらい、ゆっくりと検討するように言われた。

    結局、ネットの情報や身近な医師の意見を集約した結果、産科と心臓外科が併設されている榊原記念病院か生育医療センターのどちらかを希望したいということになった。
    ※あくまで、僕たちの住所、実家の住所からの通いやすさや実績を考慮したものであるため、一概にここがベストとは断言できません。

    そこで、次回の診察を待たずに一度榊原に相談してみようと、電話をした。
    すると、早いほうが良いと、すぐの診察予約を求められた。ここで、埼玉医科大学の紹介状が必要となるため、埼玉医科大学へ電話。
    すると、埼玉医科大学は突然の転院希望に対して「紹介状は出せない」との答えであった。
    榊原へ転院することは確定ではなく、あくまで今後どのように対応すべき意見を聞きたかっただけなのだが、これは医療業界では「セカンドオピニオン」として取り扱うべきだということを後で知った。
    両医療機関へ連絡する際に「転院を検討している」と言ってしまったのが間違いだった。ここは今後気をつけたい。

    この間、以下のサービスを利用し、第3者的視点で全国の医師からコメントをもらうことができたので、身近に相談できる医師がいない人は参考にすると良いだろう。


    2021年7月15日(21週2日目)- 榊原記念病院での診察

    埼玉医科大学総合医療センターの紹介状を持って、榊原記念病院へ。
    当日は妻は午後半休で職場から直行、僕は有給休暇を取得し、自宅から車で合流。

    埼玉医科大学総合医療センターへは渋滞に巻き込まれやすい反面、榊原記念病院へは1特に混む道もなく、1時間程度でアクセスできるため、ここの利点も大きい。

    ここは新型コロナウイルスのワクチン接種会場にもなっているようだ。

    診察が始まるまでの間、近くに生まれたばかりの赤ちゃんと母親がいた。
    その寝顔はとてもかわいらしく、いつまでも眺めていたかった。
    これまで他人の赤ちゃんにあまり興味がわかなかったが、不思議なことに今はとても愛おしく感じてしまう。

    その子がこれからどんな人生を歩むのか、遠い未来を想像しながらワクワクしていると、診察室に呼ばれた。

    これから1時間ほど時間を掛けてエコー診断をするとのこと。
    残念ながら、他の科の先生も集まるため夫は診察室からでていくように言われてしまった。

    小一時間暇を潰す方法がこれといってないため、車に戻り、エンジンをかけながら昼寝をすることに。

    そのうちに妻から「来てくれ」とラインが入ったため、急行。

    診察室に入ってしばらくすると、小児循環器科と産婦人科の先生が2人来た。
    まずは小児循環器科の先生から詳細を説明してもらった。
    総肺静脈還流異常症の説明は埼玉医科大学総合医療センターで聞いたことと大きな違いはなかったが、以下の点を聞いて驚いた。

  • 新生児は皆心房に穴が空いていること
  • 心房の穴は成長過程で自然に塞がること

  • なので、総肺静脈還流異常症で空いているべき心房中隔欠損が閉じるかどうかは、生まれた後にしか分からないのだ。

    後は取りうる手術の方法などの話を聞いた。
    榊原記念病院で手術を受ける場合は、出産後、数日新生児の体力をつけて準備できてから、手術をするそう。その後、しばらく入院が必要となる。
    なので、出生直後から育児休暇を取得しようと考えていたが、その必要はなさそうだ。


    その後、産婦人科の先生と色々相談。
    ちょっと心配だった心臓以外の合併症が見つかったときの対応について聞いてみた。
    ここは心臓専門のチームでやっているため、手に負えないケースはやはりあるそう。
    しかし、必要に応じて他の病院と連携をとって転院したり、先生を呼んだりするそう。

    総合的な対応力では成育医療センターが良いと思われるが、今の所、総肺静脈還流異常症以外に特筆すべき所見がなく、一般的なあかちゃんよりも大きく成長してくれている。
    まず心臓のことを最優先に対応してほしいため、基本的にはここで問題ないだろう。
    後は早産時の対応など話した。
    心疾患を恵愛病院で見つけた旨を話すと、あぁやっぱりあそこは優秀ですねと先生も納得。胎児のときに見つかって本当にラッキーでしたねと。

    ここの病院は、以下の点で安心できた。
  • 小児循環器科と産婦人科の先生が2人ついて話をきいてくれたこと
  • 縦割りではなく、科同士で連携できていること
  • 転院が必要な場合でもスムーズにサポートしてくれること
  • 心臓外科の実績がダントツであること
  • 家と職場からのアクセスに難がなく、緊急時でも対応しやすいこと

  • 不安な点を強いて挙げるとすれば、「手術実績数≒ほぼ1人の先生の実績数」なため、その先生が急に対応できなくなった場合の代わりである。
    が、今はほぼ引退している先生(おそらく、高橋先生)が対応するのだろう。

    今後、妊婦検診(回数券を使うやつ)は近くのクリニックでも構わないとの話だったが、月に1回は心臓の検診に来る必要があるため、2週間に1回は検診があることになる。
    妊婦健診は最初の恵愛病院も含めて迷うところだが、埼玉医科大学総合医療センターはアクセスに難があるため、取りうる選択肢は恵愛か、榊原か。

    というわけで、近く予約していた埼玉医科大学総合医療センターの検診予約をキャンセルする必要がある。

    2021年7月16日(21週3日目)- 診察予約のキャンセル

    可能な限り夫でできることはしようと、予約の連絡関係は僕が行う。
    まずは産科に電話する。。。
    キャンセルの旨を伝えると、詳しい話が聞きたいから、折り返すとのこと。

    2時間後くらいに折り返しがあった。
    榊原記念病院に転院する理由を告げた後、小児循環の方に電話を転送される。
    小児循環では、キャンセルですね~わかりましたと、特段理由も聞くことなくすんなり終わる。
    お世話になった先生によろしくお伝えくださいと言った所反応が悪かったので、詳しく話すと「あぁ、産科の先生ですかね~」と、ちょっとこれには驚いた。
    縦割りすごいなおい。

    2021年9月6日(28週5日目) - 切迫早産

    今日も寝る準備に入ったあと、
    妻がお腹の張りの違和感を訴えた。

    しばらく様子を伺っていたけど、張りは増すばかり。
    試しに触ってみると確かに、パツパツしている。

    あまりにもヤバそうならこのまま病院へいく覚悟を決めた。

    0時。
    さすがに病院には当直の医師がいて、電話して相談するくらいなら何も問題は無いだろうと、電話してみる。

    妻がしばらく症状を伝えたあと、やはり病院で観てもらったほうが良いということになった。
    病院まで車で1時間弱。
    その間に現状維持できるかわからないけど、とにかく準備をする。

    万が一、即入院となっても持ち物に困らないように一通りもっていくことにした。
    (後でわかったが、着替えはあればあるほどよい。。。。)

    だがしかし、自分、3日前にコロナワクチン(モデルナ)の2回目を打ち、土日はほぼ39.0℃の熱で苦しんでいたので、睡眠時間は皆無。
    しかもタイミングの悪いことに、次の日仕事があるため今日こそ快眠すべしと、睡眠導入剤を気持ちよく飲んだばかりであった・・・

    この状態でなんとか車を運転して妻を病院へ送り届けねばならない。。。
    こんな時、人は目が覚めるものである。

    精神論には反対だが、精神論にも一理ある。気合を入れればなんとかなる。もとい、なんとかしなければならない時は、なんとかできるものである。

    午前1時。
    そんなこんなでなんとか妻を無事病院へ送り届けることに成功する。

    それから1時間ほど診察を行っているあいだ、
    誰もいないナースステーション前の待合ソファで僕は寝っ転がり、つかの間の睡眠時間を確保・・・

    「・・・さん、、、○○さん!」

    突然、呼び起こされ、目の前に医師が立っていた。
    お休みのところすみませんね~といいながら診察結果を教えてくれる。


    (即入院です。)
    (あぁ、、、そうですか。)

    どうやら、子宮頸管が短くなっているらしい。
    つまり、子宮の出口は通常ふさがっているが、そのノリでふさがった部分の長さで判断するらしい。

    通常40mmくらいのところ、25mくらいだという。
    これは切迫早産にあたいする。

    お腹の張りを抑えるマグネシウムを点滴する必要があるという。
    たぶんだけど、筋肉を動かすためのチャネルを阻害するんじゃないか。
    これで神経が阻害されるので、筋肉がうまく動かせず、子宮が収縮するのを防ぐという算段だろう。


    当然のことながら、他の筋肉に対しても阻害するため、息がしにくくなるという。
    怖すぎ。

    ただ、ちょっと息苦しいだけかと思いきや、
    目の前の妻の場合、苦しい苦しいとあきらかに苦しそうな表情をしつつ意識が朦朧とする中で助けを求めていた。

    ついには気が狂ったように(おそらく相当パニックになっていたのだろう)「苦しいよお!助けてよおおおお!」と叫び出す。
    僕はこの時点でとても怖くなってその場から消えたくなるほどだったが、不思議なことに限界まで来ていた眠気のせいで感覚が麻痺しており、目の前の叫ぶ妻に次の判断を迫られる医師と看護師の困惑した姿が織りなす阿鼻叫喚をただじーっと見つめているだけだった。

    2021年9月22日(29週5日目) - 退院

    一週間で退院。

    仕事の都合で迎えにいけないため、車で30分の場所に居る両親にピックアップをお願いした。


    2021年9月21日(30週6日目) - 妊婦検診(産科)

    定期の妊婦検診。

    夫は同席できないので妻の話によると、子宮頸管は24mm程度だという。

    やや短いと感じたが、仕事には無理をしない範囲で行って構わないとのこと。
    4Dエコーの写真。動きが激しすぎて、まだくっきりした像を捉えられない。

    2021年10月14日(34週0日目) - 妊婦健診(小児科)

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