北海道の変異株は疑い事例も含めると、全国3番目に多い。
札幌市は道内の約8割を占め、特にクラスター(感染者集団)が起きた南区で突出している。
【土谷純一、米山淳、源馬のぞみ】 厚生労働省によると、2月22日〜3月21日の1カ月間でPCR検査により変異株の陽性が判明した人は、兵庫県(253人)が最も多く、大阪府(155人)、北海道(114人)と続く。
厚労省の独自システムで集計しているため、各自治体が発表している陽性者数とは異なる。
札幌市は変異株が拡大している事態を受け、全10区別の1週間の感染状況を発表することを決めた。
南区は3月24〜30日の1週間で新規感染者が102人おり、このうち変異株は疑いも含め76人。
他9区と比べ突出している。
市関係者によると、南区の居酒屋で高齢者による飲食を伴う集会のクラスターが発生するなどして、感染が広がったという。
市内の変異株感染の約75%が家庭内感染やマージャン、集会などによるもので、秋元克広市長は1日の会見で「身近なところで感染が広がっている」と注意喚起した。
道庁でも2日、新型コロナ感染症対策本部会議で変異株感染者の増加が報告された。
地域別では約8割が札幌市内で確認されているという。
会議で鈴木知事は「変異株は急速に拡大するリスクが高いとされ、ここでしっかりと感染を抑制しなければならない」と危機感を示した。
鈴木知事はその後の会見で「変異株に感染すると無症状でも原則、入院が必要になる。
退院するには2回の陰性確認が必要で、結果として医療機関への負荷がかかる」と医療提供体制への懸念を示した。
ただ、変異株の陽性者が多いのは全国トップの検査件数によるものだとも説明し「全国的に検査を増やさないと、変異株の全体像は分からないのではないか」と指摘した。
◇「個々人の対策が重要」 札幌市が区別の感染状況を公表した意味と今後の対策などについて、感染症に詳しい札幌医科大の横田伸一教授(微生物学)に聞いた。
【聞き手・土谷純一】 札幌市が区ごとの感染者数の発表に踏み切ったのは、感染力の強い変異株が一気に地域の中で広がることに対しての注意喚起だろう。
南区で高齢者に感染が拡大している状況は、昨年6月ごろに小樽市で起きた「昼カラ」のクラスター(感染者集団)を思い出させる。
昼カラという小さいコミュニティーで発生したクラスターから感染があっという間に広がってしまった。
南区でも同じようなことが起きている。
今回は、第3波のように繁華街から感染が広がっているわけではないため、行政から何らかの要請を出すのは難しく、個々人の対策に掛かっている。
クラスターが起きた「集会」のリスクを道も札幌市も強調しているが、飲食を伴う会食はマスクを着用せずに会話してしまうため注意が必要だ。
従来のウイルスからいずれは感染力の強い変異株に置き換わることが予想され、そのスピードをいかに抑えるかが重要。
変異株が病院や高齢者施設、若い層などに入り込むと急速に拡大してしまうため、今の時点で食い止めることが求められる。
◇札幌市の区別感染状況(3月24〜30日)区 新規感染者 変異株確認数中央区 35人 11人北区 30人 少数東区 30人 少数白石区 20人 6人厚別区 少数 0人豊平区 32人 9人清田区 少数 少数南区 102人 76人西区 15人 少数手稲区 10人 少数 ※市の資料を基に作成。
変異株確認数は新規感染者の内数で疑いも含む。
(https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20210403k0000m040015000c.htmlより引用)