「陸上撮影の経験あり」のナゾ…日本選手権のカメラクルー接触事故はなぜ起こった? 「ボルトも激突されていた」現場のリアル 2022-05-10


図 この記事のタイプ傾向 (「注意」「痛み」「危険」「苦しむ」「叱責」「激しい」「事故」「衝撃」)

(https://news.goo.ne.jp/article/numberweb/sports/numberweb-853151.htmlより引用)
 5月7日、世界選手権の代表選考を兼ねた陸上の日本選手権で思いがけないアクシデントが起こった。
「あってはならないこと」 日本陸上競技連盟の担当者がコメントしているが、その言葉通りの出来事だった。
トップがゴールした瞬間、カメラがコースに侵入し… 起きたのは男子10000mレース。
ふた組に分かれて実施されたその2組目、優勝した相澤晃(旭化成)らがゴールしたあと、大会のテレビ中継を担当していたNHKのカメラクルー2名がトラックの内側からコースに進入。
1人はカメラマンで、もう1人のスタッフはアンテナを所持していた。
カメラとアンテナはケーブルで繋がっている状態だったが、ふいにカメラマンがコース内に進み、両者の距離が空いてケーブルがコース上に張られるような状態に。
ちょうどそのとき、さしかかった三田眞司(サンベルクス)の首にケーブルが絡まった。
三田はすぐさまケーブルを振りほどいてそのままレースを続けた。
 カメラクルー2名は慌ててコースを出てトラックの内側に戻ろうとするが、今度は後続の4名、川瀬翔矢(Honda)、相葉直紀(中電工)、川田裕也(SUBARU)、細森大輔(YKK)と接触寸前になった。
選手たちは減速する、よけるなどしたことで接触は免れたが進路を妨害する形となった。
被害選手は再検査、アクシデントはなぜ起こった? 三田は首の痛みを訴え、当日、病院で診察と検査を受けたという。
その段階では異常は見られなかったが、痛みが続いていることから静養し、再度検査を受けることが伝えられている。
いずれにせよ、「あってはならない」ことが起きてしまった。
 おそらくは優勝者を近くで撮りたいという意図からトラック内側からコースへと進み出たのではないか。
 だが、まだ多くの選手がレースを続けている最中だ。
10000mであれば、周回遅れの選手がいるのもごく普通のことだし、実際の映像を確認してみても、選手たちはカメラクルーが位置していた付近へと次々に向かってきている。
あえて推測すれば、優勝者にしか視点が向かず、そこに意識が集中しきっていた可能性もなくはない。
ただNHKによると、「陸上撮影の経験はある」カメラマンだと言う。
別の業界カメラマンに聞くと「インカムで撮る画について指示されていて、それに従ったのでは」という指摘があった。
 今回に該当するかは別として、カメラマンという立場を考えれば「一歩前でいい画をおさえたい」という心理が働くこともあるはず。
例えば、プロ野球のあるチームの室内練習場での取材時、打球への対策としてネットが張られていたが、その隙間からレンズを入れて撮ろうとするカメラマンがいた。
気づいたコーチから激しい叱責を受けていたが、それもそうした心理の表れだっただろう。
また、撮影を依頼される際、絵柄についての強い要望を受けているケースも現場ではよく耳にする。
 でもそうした心理はほとんどの場合、本番になれば抑制されるものだ。
選手に危険を及ぼす行為はしない、競技を妨げないことが「大前提である」ことを関係者であれば誰もが承知しているからだ。
だからこそ撮影ポジションも入念に調べているし、その範囲でどう撮れるかも想定されている。
今回のアクシデントについては、大会を前に細かな安全確認作業を陸連側とNHK側で行なっていなかったと説明されているが、いつでも“前提”が共有されているという思いがあってのことだろう。
実際、多くの場合、それで成り立っている。
ただ経験のあるスタッフの下で、今回のアクシデントが起きてしまったことは理解に苦しむ。
過去にもあった、選手とカメラマンの接触事故 もちろん頻発はせずとも、注意していても起きてしまうのがアクシデントである。
これまでも、カメラマンと選手による接触事故はあった。
 2015年、北京で行なわれた世界陸上選手権での出来事は広く知られている。
100mに続き200mでも優勝したウサイン・ボルトが場内の声援に応じていた最中、セグウェイに乗ったカメラマンが至近距離からボルトを撮ろうと近寄った。
その瞬間、バランスを崩し、セグウェイがボルトの足に接触。
その衝撃でボルトは後ろ向きに倒された。
 ボルトはジョークを交えつつ、「足首ではなくふくらはぎだから問題はないと思う」と語ったが、接触箇所が陸上選手の要である足であったことや、不意をつかれて後ろ向きに倒れてしまったこともあり、一歩間違えれば大きなアクシデントになりかねなかった。
撮影側に細心の注意が欠けていた感は否めない。
 また、今年2月の北京冬季五輪では、スキー男子ハーフパイプ予選でヨン・サリネンがトリックでバランスを崩してハーフパイプの外に出たとき、撮影したカメラマンと激突した。
この場合カメラマンは所定の位置にいたが、撮影ポジションにもう一考あってもよいケースかもしれない。
 昨年の8月、男子テニスツアーの「ウェスタン&サザン・オープン」準決勝ではダニール・メドベージェフがボールを追いかけた先で、コート後方のテレビカメラにぶつかるアクシデントが発生。
メドベージェフはカメラを蹴り、位置を変えるように強く要求するなど主審と議論を続けた。
撮る側と選手側とのアクシデントは、数は少なくても起きうる 撮る側と選手側とのアクシデントは、数は少なくても起きうる。
ボルトの出来事のあと、「他人事とせず、より細心に注意を払うようになった」という話を聞いたこともあるが、それでも、ときに生じる。
 今回の日本選手権のケースは「あってはならない」極端な例かもしれない。
ただ、現場に対する少しの緩みから、さまざまなアクシデントが起こり得るとも言えるだけに、立ち会う現場への真摯さこそ、忘れてはいけないことであることをあらためて感じる出来事でもあった。
(https://news.goo.ne.jp/article/numberweb/sports/numberweb-853151.htmlより引用)

関連記事