《箱根駅伝》四強・明大は、なぜ“シードすら”取れなかったのか?「大学駅伝の戦国化が進む」2つの要因 2021-01-08


図 この記事のタイプ傾向 (「厳しい」「臭い」「素晴らしい」「楽しみ」「物足りなさ」「支援」「推薦」)

(https://news.goo.ne.jp/article/numberweb/sports/numberweb-846591.htmlより引用)
蓋を開けてみると、レース展開は「カオス」に 駒澤大学の劇的な逆転優勝で幕を閉じた第97回箱根駅伝。
ただ、レースを大きく盛り上げ、主役を演じたのは間違いなく出場4回目の創価大学だった。
選手が見せた強豪校に劣らない強く、溌剌とした走りは、観ている人の心に刺さったに違いない。
 しかし、その前評判は決して高くはなく、今年は青山学院大学、東海大学、駒大、そして明治大学が優勝を争うだろうという声が圧倒的に多かった。
蓋を開けてみると、レース展開は「カオス」になったのだ。
 箱根前哨戦でもある全日本大学駅伝でも、全8区間中6区間で先頭が入れ替わる展開だったが、箱根の往路区間も5区間中、4区間でトップチームが入れ替わる大激戦。
しかも優勝候補の青学大が12位、明大が14位で大苦戦という信じられない展開だった。
 復路も時差スタートができたのが17校と昨年の12校を大きく上回って混戦駅伝を演出し、戦力格差が縮小傾向にあるのが見てとれた。
実力伯仲の「戦国駅伝」と言われたのは第94回大会だが、今年のレースはそれ以上にその色を濃くし、箱根常連校の苦戦や有力選手の失速に加え、大学間の戦力の均衡化が進行しているように見える。
 なぜここまで“大学駅伝の戦国化”が進んだのか? チーム全体の底上げを重視した“中堅ならではの取り組み” まず第一に、各大学の強化の取り組みが実を結んできたことが挙げられる。
 エリート選手が入ってくる強豪校では、春は個々が挑戦する種目に力を入れ、夏合宿から駅伝仕様に仕上げていくケースが多い。
練習はデータ化され、タイムや練習の消化率を見ることで「箱根でどのくらい走れるのか」を判断できるようになっている。
 一方、創価大を含め中堅どころの大学は基本的に春からロング走を主体としたオーソドックスな練習を取り入れているところが多い。
それは、箱根の20キロを走る力を養うのに必要な練習であるのと同時に、エリート選手が入ってくる強豪校とは選手のレベルに差があるから。
そのためチーム全体の底上げを重視し、春先から選手を走らせて脚を作り、距離を走れる選手を育成していく。
 実際、創価大の榎木和貴監督は、「練習は特別なことをしておらず、学生時代に中央大で箱根を目指していた時、今の東京国際大の大志田監督がコーチ時代に立ててくれたメニューを参考にしながら作りました。
その中で旭化成での経験や指導者の経験をうまく織り交ぜながら今の選手たちに合った指導に落とし込んでいます」と語っている。
 今回の創価大の躍進は、1年生から泥臭い練習を始め、2年、3年かけて地道に育て、実を結んだ成果と言える。
「強豪校がスカウティングに有利」は、もう成り立たない「スカウティング」による選手の分散も、戦力格差を縮小している要因の1つだろう。
有望選手のスカウティングは、ここ数年、熾烈さを増している。
 これまでは、スポーツ推薦で授業料や寮費などの免除やスポーツ奨励奨学金などを出せる大学は限られていた。
そのため、行きたい大学があっても家庭の経済環境が厳しい選手は断念せざるを得ず、経済的な支援が可能な大学に行くケースが多かった。
 だが、最近は箱根常連校をはじめ、全体的にスポーツ推薦枠の数が増え、経済的なサポートが受けやすくなってきている。
同時に、高校生ランナーの見る目も変わりつつある。
 以前は、有力選手はもちろん中間層にも平均レベル以上の選手をそろえた強豪校からの誘いに、二つ返事で承諾する学生は多かった。
金銭的なサポート以外にも、魅力的なチーム作りや確固たる戦略は、箱根駅伝を目指す学生にとって何より重要だったからだ。
 しかし選択の間口が広がったことで、大学の強化方法や寮などの環境、チームの雰囲気、監督の指導に加え、専攻できる学部や教職課程の履修、さらに将来の目標などを総合的に判断し、「箱根だけがすべてではない」と強豪校の勧誘を断って、自分がやりたいことができる大学を選択するケースが増えてきている。
 SNSで選手同士がつながり、各大学の情報や練習動画など、さまざまな情報が得られるようになったことも影響力として大きい。
 実際に昨年の都大路を走った選手の進路は、箱根強豪校だけではなく、予選会を走る大学などにも分散している。
選手の意識や思考が多様化したことで、「箱根強豪校がスカウティングに有利」という図式は以前ほど成り立たなくなってきているのだ。
16名中14名が好タイムを持っていたのに…… とはいえ、今大会で優勝候補が苦戦して、中堅校と僅差の戦いを一番印象付けたのは、主力選手らの持ちタイムがダイレクトに反映されなかった事実だろう。
 しかも昨年は、学生の好タイムラッシュで自己ベストを更新する選手が多かった。
 日本選手権の10000mに出場して27分台を出した田澤廉(駒大)、中谷雄飛、太田直希(ともに早稲田大学)に加え、吉居大和(中大)は5000mでU-20日本を記録を更新し、三浦龍司(順天堂大学)も3000m障害でU-20記録更新するなど素晴らしい走りを見せた。
明大は、エントリーメンバー16名中14名が10000mを28分台で走る選手を揃えていた。
 しかし、現実には田澤が2区7位、中谷は3区6位、太田は2区13位、吉居は3区15位、三浦は1区10位と、いまひとつの成績で、日本選手権組でタイム通りの実力を発揮したのは1区2位の塩澤稀夕(東海大)と2区3位の池田耀平(日本体育大学)だけだった。
明大に至っては、1区16位、2区17位、3区12位と完全に出遅れ、総合11位に沈没。
シード権を確保できずに終わっている。
 全体を見れば前回大会は7区間で区間新が生まれたが、今年の区間新は1区間のみ。
しかも留学生による更新だった。
北風や低温など気象条件が厳しかったこともあるが、選手の持ちタイムからすると全体の成績には物足りなさが残る。
東海大監督「レースだけに照準を合わせて…」 この要因について東海大・両角速監督は、「普段の練習を抜いてポイント練習を頑張って評価してもらおうとか、レースだけに照準を合わせてタイムを出そうとする選手が多い。
箱根で勝つためには、そういうことじゃない。
きつい練習をしつつ、ポイント練習をこなしてレースで結果を出すタフさが必要になる」と語っている。
 実業団の監督にも学生が出す好タイムについて話を聞いたが、「タイムほどの強さがない」と感じている人が多かった。
レースに合わせて調整し、コンディションの良い状態で出て、タイムを狙い撃ちしたか、あるいはタイムが出てしまったという選手が多いのではないか、ということだ。
 今回の箱根で好タイムを持ちながらも自分らしい走りができなかった選手は、「速さ」を「強さ」に変換することができなかったのだ。
これからも大学間の戦力は均衡化していく 創価大の選手が設定通りあるいは設定以上のタイムで走れていたのは、榎木監督の指示でタイム差やライバルを気にせず、自分の走りに集中できたところにある。
この持っていき方は、箱根を戦ううえで他の大学にとって大いに参考になるだろう。
 大学にブランドを求める高校生は別として、これからは選手の分散が進み、それぞれの強化策で力を蓄え、大学間の戦力は均衡化していく。
箱根強豪校だけの優勝争いという展開も、今大会で創価大がブレイクスルーしたことで、「駅伝カオス」がさらに進行する可能性がある。
 来年は「創価につづけ」とばかりに、どの大学が箱根駅伝で《下克上》を起こしてくれるだろうか。
いまから楽しみだ。
(https://news.goo.ne.jp/article/numberweb/sports/numberweb-846591.htmlより引用)

関連記事