人口上回るかかし 量産の夫婦、やりすぎてあわや通報? 2021-01-05


図 この記事のタイプ傾向 (「驚く」「面白い」「楽しむ」「目を細める」「喜ぶ」「通報」)

(https://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/ASNDV3CHSND8PITB00K.htmlより引用)
 広島市の山あいの集落に、人口より多い約120体のかかしがいます。
記者が現地を訪ねると、かかしだけにとどまらない盛り上がりがありました。
    ◇ 広島市中心部から車で約1時間。
車同士がすれ違うのもやっとの長い一本道を抜けると、山あいの集落にたどり着いた。
 あちこちに人影が見える。
国道沿いのガードレールに手を掛けて、集落を見つめる親子連れ。
橋の上で釣りざおを手にたたずむカップル……。
近づいてよく見ると、ピクリとも動かない。
すべて、かかしだ。
 広島市佐伯区湯来町の上多田地区。
人口約90人。
65歳以上の高齢者が9割を占めるというこの地区に、人口より多い約120体の「リアルすぎる」かかしたちがいる。
作っているのは一組の夫婦だと聞いて、制作現場を訪ねた。
 「リアルかかしの里山」と書かれた看板に従い、たどり着いた広場には10体ほどのかかしがいた。
 すぐそばにある木造2階建ての家はさらに圧巻だ。
軒先から屋根の上まで50体余りがぎっしり。
あっけにとられて眺めていると、広場で竹馬を楽しむかかしの横で、1体が動いた! ……と思ったら人だった。
 この人こそ、森本昌利さん(68)。
妻の衣江さん(65)と2人で2011年7月からかかしを作り続けているという。
 家は衣江さんの生家。
衣江さんの父沢本育磨さんが一人で暮らしていたが、2004年に亡くなった。
七回忌を終え、遺品を整理していたとき、昌利さんが思いついた。
「近所の人を驚かせてみよう」 育磨さんが残した服や杖を使ってかかしを作り、家の前に置いてみた。
「面白い」「もっと増やして」。
近所の人たちも衣類の整理を始め、花嫁衣装や礼服を段ボール箱に入れて持ってきてくれた。
 かかし作りは夫婦の共同作業だ。
ホームセンターで買った木材で昌利さんが骨組みを作り、顔の下絵を描く。
顔を縫うのは衣江さんの仕事だ。
運送業者が捨てるはずの梱包(こんぽう)用ラップを持ってきてくれて、かかしの足に巻き付ける。
指は動くようにワイヤを使う。
ポーズも1体1体変えるなど、細部までこだわり満載だ。
多いときで1週間に1体のペースで作り、160体を超えたことも。
 テレビでも紹介され、評判は県外にも広まった。
宅配便で服が届き、鳥取県でかかしを作っている人たちがバスで視察に訪れた。
 「リアルすぎる」「なんじゃこりゃああああ」。
家の前に置いたノートには、訪れた人たちがコメントを寄せる。
夫婦で一つ一つ返事を書く。
「宝物」だというノートは現在6冊目。
■時にハプニングも 「人が集まり、子供たちの楽しそうな声を聞くのはうれしい」。
衣江さんは目を細める。
 あまりにリアルすぎるかかしは、しばしばハプニングも起こしてきた。
 台風の翌日、強風に耐えきれず倒れていたかかしを近所の人が見つけて、「人が死んでる!」と通報しそうになったことも。
集落に出没するサルたちも、かかしが登場し始めた頃は顔をのぞき込み、不思議そうにしていたという。
「夜見ると自分でもびっくりする。
ちょっとリアルに作りすぎた」と昌利さん。
本人も驚くのなら無理はない。
 最新作は昨年3月に亡くなった志村けんさん。
2階の窓から侵入しようとする泥棒を「バカ殿」姿で屋根の上で捕まえている設定だ。
今は歌舞伎俳優の尾上松也さんを作っているという。
 「最初は1年ほどで終わろうと思ったが、気づいたらここまで続いていた。
年をとってからの思い出づくり。
細々と続けていきたい」と昌利さんは言う。
   ◇ 今、この地区を盛り上げているのは、かかしだけではない。
 「ここに来る人はかかしを見てすぐに帰っていた」。
上多田地区内の集落の一つ、雲出(くもで)集落出身の大田昭三さん(71)は振り返る。
 「生まれ育った場所を荒廃させたくない」。
17年、同級生の佐古和好さん(71)とともに「くもでを愛し守る会」を立ち上げた。
バーベキュー場や釣り堀を手作りし、「くもで交流広場」をオープンさせた。
森本さん夫妻に作ってもらったかかし3体が広場で遊ぶ子どもたちを見守る。
 18年には古民家など4軒で民泊も始めた。
大田さんによると、昨年は約3千人が広場を訪れたといい、かかしに次ぐ新たな魅力となっている。
 「辺鄙(へんぴ)なところでも、やりようによってはお客さんが来てくれる。
地域の人も来てくれる人も喜んでくれて、自分たちもうれしい」と大田さんは喜ぶ。
「上多田で仕事ができて、生活できるようになればいい」と夢を膨らませる。
   ◇ 上多田地区には2015年、15年ぶりの「リアル子供」が生まれた。
地区の町内会連合会会長を務める佐藤亮太さん(35)と英美さん(33)の長女だ。
 2人は東日本大震災後の11年9月、福島県から広島市中区に移り住み、14年4月、上多田の空き家に入居した。
震災をきっかけに、食べるものを自分で作り、自然と共に生きたいと考えるようになったという。
 亮太さんは言う。
「かかしはこの地区の欠かせない資源だけど、エネルギーあふれる『人』もたくさんいる。
(https://news.goo.ne.jp/article/asahi/nation/ASNDV3CHSND8PITB00K.htmlより引用)

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