人口1700人の与那国島、有事の最前線…自衛隊配備進む[沖縄復帰50年]<1>安全保障 2022-05-12


図 この記事のタイプ傾向 (「注意」「焦り」「安定」「遺憾」「恐れ」「危険」「緊張」「緊張感」「緊迫」「懸念」「好機」「大切」「大事」「不安」「不満」「支援」「抗議」「事故」「協力」「避難」「分からない」)

(https://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20220511-567-OYT1T50316.htmlより引用)
 沖縄本島の509キロ・メートル南西に浮かぶ日本最西端の与那国島(沖縄県与那国町)は、人口約1700人の国境離島だ。
台湾から111キロ・メートルの島は今、中国の軍事的な台頭で緊張が高まっている。
 4月28日、1通のメールが与那国島の漁業協同組合に届いた。
題名は「台湾東における射撃訓練」。
台湾軍の演習に伴い、特定海域にいる漁船に対して、水産庁が注意を呼びかける漁業安全情報だ。
 「また台湾で射撃訓練か」 漁協の嵩西(たけにし)茂則組合長(60)は、ため息をついた。
「中台統一」を掲げる中国が台湾周辺で軍事的な威嚇を続ける中、「中国の脅威にさらされ、台湾の演習が増えた」と肌で感じ取る。
2018年度に15件だったメールは昨年度、34件に増えた。
台湾東側は、アカマチ(ハマダイ)などの好漁場で知られるが、演習が増えれば漁場は狭まる。
 島の守りは、かつて「拳銃2丁」とやゆされた。
島内に2か所ある警察の駐在所にちなんだものだ。
長く防衛の空白地帯と指摘されてきたが、16年3月に陸上自衛隊の駐屯地が設置された。
沿岸監視隊員約160人がレーダーなどで船舶や航空機を24時間監視する。
 航空自衛隊も今年4月、駐屯地を拠点に与那国分遣班を新設。
移動式警戒管制レーダーで領空侵犯の恐れがある外国軍機を探知し、那覇市の航空自衛隊那覇基地からの緊急発進(スクランブル)につなげる。
昨年度のスクランブルは1004回で過去2番目の多さだった。
中国機への対応は全体の7割を超える。
 目視で中国機を確認したこともあるF15戦闘機パイロットの藤田俊介1尉(31)は「相手が何をするか分からないだけに、中国機を確認すると緊張感が高まる」と語る。
 防衛省は、敵のレーダーや通信機器を無力化する電子戦部隊について、23年度にも与那国島への配備を計画している。
「拳銃2丁」だった与那国は、いまや国境の守りの最前線だ。
 与那国以外でも自衛隊の存在感は高まる。
駐屯地は19年に宮古島に設置され、22年度中には石垣島でも開設される。
太平洋戦争で県民の約4分の1が亡くなったとされる沖縄戦の記憶から「基地は攻撃対象になる」と反対運動もあるが、危機感を抱く住民の間では自衛隊誘致を求める声が広がる。
 ロシアによるウクライナ侵攻も影を落とす。
 与那国町の糸数健一町長(68)は侵攻の一報を聞き、「中国が好機とみて、台湾にちょっかいを出さないだろうか」と不安に駆られた。
ウクライナの市街地の惨状を見て、「戦場になる前に一般人を避難させなければ」とも感じた。
 町は台湾有事も念頭に、国民保護法に基づく避難想定例を策定済みだが、対象範囲は島内にとどまる。
地区ごとに学校などに集めた町民を、空港や港にバスなどで運ぶ想定だ。
その先の島外への避難は、主に国が責任を持つが、町は明確な回答を得られていない。
糸数町長は焦りを隠さない。
 「命をどう守るかという問題だが、国や県の動きが鈍い。
危機感が足りない」 5月15日に本土復帰50年を迎える沖縄。
現状と課題を現場から報告する。
対中「抑止」米の新構想…敵射程圏内、島々に拠点 「これから一緒に我々が何をするかが、今後の30年を決める。
協力する責任が我々にはある」 4月27日、ラーム・エマニュエル駐日米大使は沖縄県庁で玉城デニー知事と向き合い、中国の抑止を念頭に、日米同盟を深化させる意義を強調した。
駐日米大使が知事と沖縄で会談するのは約4年5か月ぶり。
着任3か月での訪問は、在沖縄米軍基地の重要性と地元理解の大切さを意識したものと受け止められた。
 在沖縄米軍の重要性が高まっているのは、台湾有事が現実味を帯び始めたからだ。
台湾国防部内には「中国は2025年に台湾侵攻能力を備える」との見方もある中、米軍は新たな作戦構想に基づく訓練を活発化させている。
 今年2月、沖縄県金武町の米軍金武ブルー・ビーチ訓練場。
離島に見立てた海岸に1艇の揚陸艇が沖合から急接近してきた。
海面を滑るように走るのは、米海軍のエアクッション型揚陸艇だ。
 「ゴゴゴゴ」という大きな音が響き渡る中、揚陸艇は砂浜に乗り上げた。
上陸後、揚陸艇の前方部分が開き、高機動ロケット砲システムを搭載した車両が陸地にあがり、発射態勢を整えた。
上陸から、わずか5分ほどだった。
 訓練が想定するのは、占拠された離島の奪還を含む、拠点の確保だ。
統括した米海兵隊幹部は「台湾有事も非常に懸念している。
万が一の事態に備えて能力を高めている」と強調した。
 米軍の新たな作戦は「遠征前方基地作戦(EABO)」と呼ばれる。
機動性に優れた海兵隊の小規模部隊が、敵の射程圏内の島嶼(とうしょ)に分散し、対空・対艦攻撃、補給、情報収集などの拠点を築く。
対艦ミサイルの脅威にさらされる米海軍の制海権確保を支援する。
 沖縄県うるま市のキャンプ・コートニーに司令部を置く第3海兵遠征軍が新たな作戦で中心的役割を担う。
傘下の第31海兵遠征部隊(2200人規模)は有事の際、真っ先に現場に駆けつける部隊で、米本土外に拠点を置く唯一の海兵遠征部隊でもある。
 米軍が沖縄を離れ、展開に時間がかかると中国が見れば、台湾を制圧できると判断する危険が高まる。
こうした情勢認識を踏まえ、米海兵隊は昨年12月、敵の射程圏内にとどまり、抑止力となる「スタンド・イン・フォース(圏内部隊)構想」を公表した。
 米軍の戦略に精通する岩田清文・元陸上幕僚長は「海兵隊が沖縄にいて『迅速に展開できる』と示すことが、中国に過信と誤算を招かない抑止力になる」と指摘する。
 もっとも、1972年の本土復帰以降も続く米軍基地の沖縄への過剰集中に県民の不満は根強い。
政府は負担軽減に力を注ぐが、在日米軍専用施設・区域の70・3%は国土面積0・6%の沖縄に置かれる。
比率は復帰時の58・7%から増えた。
本土で返還が進んだことなどが要因だ。
 台湾など周辺環境の緊迫化で訓練が激化し、重大事故が起きたこともある。
米軍基地由来の環境汚染問題も深刻だ。
在沖縄の米海兵隊は21年8月、米軍普天間飛行場(宜野湾市)から健康への影響が指摘される有機フッ素化合物を含む水を基地外に流出させた。
前年4月に同じ化合物を含む泡消火剤が同飛行場から流出し、日米間で処理方法を協議中だった。
岸防衛相は「極めて遺憾だ」と抗議した。
 米側も安定的な基地運用に地元理解が欠かせないことは認識している。
4月17日、うるま市海岸に米軍を含む日米のボランティア約130人が集い、清掃活動を行った。
英会話教室を開いたり、地区の運動会や伝統行事に参加したりするなど、地元との交流を重ねる。
 「米軍は良き隣人であるべきだ」。
エマニュエル大使や米軍幹部らは口をそろえる。
その言葉をどれだけ県民が実感を持って受け止められるかが、地域と国際社会の安定に不可欠な日米同盟の強さにも直結する。
(https://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20220511-567-OYT1T50316.htmlより引用)

関連記事