決算書といえば投資やビジネスといった視点で見るイメージがあると思いますが、より一次情報に近い経済ニュースとしてとらえる事も可能ですので、そういった視点で取り上げていきます。
今回取り上げるのはサイゼリヤです。
もちろんイタリアンのファミリーレストランであるサイゼリヤを運営している企業です。
店舗展開としては、すべて直営店で行っており、食事形態としては店内飲食がメインの企業です。
今回は同社の決算から、直営・店内飲食中心の業態の現状とサイゼリヤの今後を考えていきましょう。
●コロナ以後、苦しい状況続く まずは直近の決算を見ていく前に、ここ数年間のサイゼリヤの業績の推移を確認していきます。
売上高の推移を見ていくとコロナ以前は右肩上がりで成長していたことが分かります。
しかし2020年8月期は売上高は19%減、21年8月期になってもほぼ横ばいと、コロナ以後は苦しい状況が続いています。
ご存知の通り外食産業は、時短営業や外出抑制などの影響を受けてしまったわけです。
とはいえ20年にコロナの影響が出始めたのは2〜3月以降で、業績への悪影響としては半年程度。
21年の8月期は通期を通してコロナの悪影響があったことを考えると、業績は回復傾向ではありますね。
続いて営業利益の推移を見てみましょう。
17年8月期〜19年8月期を見ると、十分に利益が出ているとはいえ、売上が右肩上りだったにもかかわらず営業利益面では増減を繰り返しています。
店舗数の推移を見ると次のようになります。
・2017年8月期:1000店舗・2018年8月期:1022店舗・2019年8月期:1041店舗 店舗数が増加していますので、店舗の増加で売り上げは増えていたものの、出店によるコストの増加や、店舗当たりの収益性が悪化していたことが考えられます。
そして20年8月期には38億円、21年8月期には22億円の赤字へと転落しており、コロナの影響を受けて営業利益赤字が続いていることが分かります。
苦しい状況は継続していたということですね。
●赤字継続も経常利益は大幅に黒字化 さて、非常にざっくりですがサイゼリヤのここ数年の業績が分かったところで「じゃあサイゼリヤの現状はどうなっているの」ということで、直近の決算発表を見ていきましょう。
今回見ていくのは22年8月期の第2四半期(21年9月〜22年2月)までの業績です。
売上高は10.1%増の692.1億円、営業利益は7.8億円の赤字→4600万円の赤字、経常利益は2.5億円の赤字→76.6億円の黒字、純利益は5.6億円の赤字→50.3億円の黒字となっています。
営業利益ベースでは赤字継続となりつつも、経常利益や純利益は大幅に黒字化していることが分かります。
続いてコロナ前の業績とも比べてみましょう。
19年8月期の第2四半期までの状況と比べてみます。
売上高は8.4%減、営業利益は35.1億円の黒字→4500万円の赤字となりつつも、経常利益は101.7%増、純利益は175.5%増となっていて、コロナ前をはるかに上回るような利益水準となっています。
ちなみに営業利益は本業での利益のことで、サイゼリヤの運営でどれくらい稼いだのかを表していて、経常利益や純利益はそれ以外の企業全体の活動も含めた利益のことです。
つまりサイゼリヤは、本業ではコロナの悪影響が続いているものの、それ以外で大きな利益を出していたわけです。
ではどういった本業以外の利益が大きかったのでしょうか。
実は営業外収益として補助金収入が75.2億円もあることが分かります。
つまり、サイゼリヤは時短協力金などの補助金収入によって、コロナ前の倍以上の利益水準になっていたということですね。
小規模事業者が補助金で潤っているという話はよく出ていましたが、実はサイゼリヤのような大手チェーンも補助金で好調になっていたワケです。
他の飲食チェーンも同様な状況の所が多いです。
今後は経済正常化に伴い補助金の影響はなくなっていくことが考えられますので、実は経済正常化によって飲食チェーンは経常・純利益ベースではむしろ業績悪化となる可能性がありそうです。
●サイゼリヤはどこで儲(もう)けているのか? 続いてもう少し詳しく業績を見ていきましょう サイゼリヤは展開している地域ごとに、日本(サイゼリヤ)、豪州、アジアとセグメントを分けて業績を開示しています。
各事業のそれぞれの業績の推移は1.日本:売上460.4億円(5.3%増) 利益32.5億円の赤字→27.1億円の赤字2.豪州:売上21.6億円
(https://news.goo.ne.jp/article/itmedia_business/trend/itmedia_business-20220510_047.htmlより引用)