開幕まであと4カ月。聖火リレーと東京五輪を世界はどう見ているか 2021-03-30


図 この記事のタイプ傾向 (「注意」「安心」「恐れ」「悲しい」「厳しい」「残念」「失望」「情熱」「落胆」「笑い」「事故」「衝撃」「決定」「期待」)

(https://news.goo.ne.jp/article/sportiva/sports/sportiva-0000092485.htmlより引用)
 3月25日にスタートした聖火リレー、そして開催まで4カ月をきった東京五輪を、世界はどう報じているのか。
イタリア、ドイツ、ブラジル在住のスポーツライターがレポートする。
福島からのスタートは「終わらない悲劇はない」と語りかけてくれたパオロ・フォルコリン(イタリア) 東京五輪が不運な大会になることは、かなり前からわかっていた。
だが、実際に国外からの観客を入れないと決まったことには――その理由は十分に納得できるにしても――やはり残念である。
五つの輪に象徴されるスポーツで結ばれた世界も、実感できないだろう。
 イタリアでも、特に(不当にも)マイナースポーツと呼ばれている競技のファンの落胆は大きい。
日ごろからサッカーに、話題も情熱も吸い取られている彼らにとっては、五輪は数少ないリベンジの場所だからだ。
 ただ、正直に言うと、一般的にイタリアでは、サッカーのW杯などに比べたら五輪の人気は低い。
イタリア人の興味は、それよりも6月に行なわれるサッカーのヨーロッパ選手権のほうに向いている。
 組織委員会のトップが女性蔑視の発言で辞任したなどというニュースも届いてはくるが、イタリア人にとっては目くじら立てて非難することというよりは、どこか笑い話のようなものだ。
コロナ禍でロックダウンが行なわれている今、東京五輪が人々の話題に上ることはまだ少ない。
2011年のW杯で優勝したなでしこジャパンのメンバーが第1走者となってスタートを切った聖火リレー だが、聖火リレーが始まったことで、人々の注目度は徐々に高まっている。
イタリア最大のスポーツ紙『ガゼッタ・デロ・スポルツ』は見開き2ページで特集を組んでいる。
なによりも注目されているのは、その出発点が福島だということだ。
これはシンボリックで大きな意味を持つ。
福島の原発事故は、10年たった今でもイタリア人の記憶に強く残っている。
 衝撃的な悲劇に見舞われた場所から聖火がスタート。
テレビでは、津波によって家族を失った男性が聖火を持って走っている姿が映し出されている。
今また新たな災厄に見舞われた世界に、「決して終わらない悲劇はない」と語りかけてくれているようだ。
今回の聖火リレーをイタリア人はそう見ている。
 大会が開催されることには、たいていのイタリア人は賛成のようだ。
水泳や幅跳び、高跳びなどでメダルが期待できる選手も数人いるし、選手たちも日々鍛錬し、東京に行くことを心待ちにしている。
ワクチンを接種し、PCR検査もきちんとすれば、感染の恐れも少ないだろう。
なにより開催地の日本は、何事にもきちんとしていることで有名な国である。
その点においては、選手たちも安心しているようだ。
東京特派員の報道にも、五輪に対して厳しいスタンスが見え隠れ了戒美子(ドイツ) 東京五輪に限らず、純粋にスポーツメディア的な観点からすると、五輪と同じ年に開催されるサッカーの欧州選手権や、日常的なブンデスリーガに比べると、五輪に関する報道は極めて少ない。
ただ今年は、輪をかけるように五輪の話題は聞こえてこない。
 ドイツでは11月から行なわれているロックダウンが、少なくとも4月18日まで続くことが決まっており、「夏の休暇はどうなるのか」「経済はどうなるのか」「ワクチンは?」といった話題で埋め尽くされている。
ひと言で言えば、五輪どころではないのだ。
 それでも、組織委員会のトップからスキャンダラスな発言があって辞任したことと聖火リレーのスタートは、多くのメディアで触れられている。
 公共放送『DasErste』は毎日20時から放送されるニュース番組の中で、聖火リレースタートについて「22時15分からの『tagesthemen』で取り上げます」と告知。
その『tagesthemen』という30分番組では、13歳の聖火ランナーを軸に、彼の人生に重ねるように福島の震災からの歩みを紹介していた。
 サッカーを中心にスポーツ全般を取り扱う『キッカー』誌のウェブでは、五輪特集のトップページに3つの記事が掲載されている。
ひとつは聖火リレースタート、ふたつ目は外国人客を入れないという決定について。
そしてもうひとつは、それについてトーマス・バッハIOC会長が理解を求め、謝罪するコメントの動画だ。
 聖火リレーに関する記事では、著名人の辞退が相次いだこと、日本ではワクチン接種が未だ本格的に始まっておらず、再び感染者は増えていること、外国人客が入れないことでチケットセールスの担当者が失望していることなどを取り上げ、最後は「日本人の過半数が五輪開催に反対している」と締めている。
 東京に特派員を置く南ドイツ新聞は、橋本聖子組織委員会会長が「希望の光に」と語ったことにかけて「聖火リレーは始まったが、これは希望の兆しか、それとも、高額の放映権料のために無視できない世界的スポーツの祭典の狂気か」と、疑問を投げかけている。
 また、被災して故郷の双葉町を離れ、埼玉に移住している被災者の「復興五輪というなら、その予算を復興そのものに使えば」というコメントを紹介していた。
「聖火リレーイベント自体の雰囲気は悪くなかった」としながらも、記事からは五輪への厳しいスタンスがうかがえる。
 ドイツメディアは総じて、自分たちに関わりのあることには関心があるので、外国人客とボランティアが日本に入国できないという決定についてはきちんと報じられていた。
また、女性蔑視発言やスキャンダルもそれなりの話題にはなった。
ただ、そこまで熱を持って伝えているという印象は受けない。
やはり、それどころではないという空気が蔓延しているように感じられるのだ。
5年前、五輪に熱狂した国が直面する厳しすぎる現実リカルド・セティオン(ブラジル) 東京五輪の聖火リレーが始まったことは、いくつかのニュースサイトで紹介されているが、テレビのニュース番組や新聞ではほとんど報道されていない。
私もこの原稿を書くために注意して探さなかったら、見逃していたことだろう。
『グローボ』などのブラジルの大手日刊紙は、通常時ならばスポーツに少なくとも4ページ割いていた。
だが、今は他に報道することが多すぎて、半ページに減ってしまった。
そこに聖火リレーのスペースはなかった。
 5年前、五輪を開催したのはまさにこのブラジルだった。
聖火リレーに皆が熱狂し、とんでもない騒ぎとなったのを今でもよく覚えている。
誰もが聖火を持って走りたく希望者が殺到し、35万人の人が抽選から漏れたという。
ペレやロナウドといったスポーツ選手や歌手や政治家といった有名人と、一般人がともに走るスタイルだったが、その人たちの紹介と、今どこを走っているかという記事で溢れていた。
聖火を持たせて記念写真を撮るという商売も横行した。
聖火が国内を巡った4カ月間、ブラジルはその話題で持ちきりだった。
 今回の様相はあまりにも違う。
五輪の聖火とは、世界の人の心をひとつにするべきものだが、今の聖火にその力はなくなってしまったのかもしれない。
本当に悲しいことだ。
 ブラジル五輪委員会(COB)は、現在も東京五輪に対して慎重な態度をとっている。
彼らにとって東京五輪は頭痛の種だ。
あまりにも問題が多すぎるからだ。
 いまブラジルは、世界でも最も厳しいパンデミックに見舞われている。
1日に3万人が新たに感染し、3000人が亡くなり、多くの町がロックダウン状態にある。
リオデジャネイロやサンパウロは最高警戒度のフェーズに置かれ、病院にもう空いている病床はない。
 東京五輪でブラジルは22の種目に参加予定だ。
だが、そのうち10の種目で十分で継続的な練習ができておらず、9の種目ではまったく練習ができていない。
セイリングのある選手は、「初めの頃は、自腹で国外に行って練習をしていた。
しかし、資金も尽きてブラジルに帰るしかなかったが、国内のビーチはすべて閉鎖されてしまっている。
練習しようとしても警察に追い払われる。
こんな状況では他国の選手と対等に戦うことはできない」と語っている。
 国によっては普段と同じような練習をしているところもあることを考えると、公平にオリンピックの舞台で戦うことはほぼ不可能だろう。
 それ以前に、代表選手も参加資格も確定していない競技が多い。
パンデミックのひどいブラジルからの入国を、現在100以上の国が拒否している。
そのためブラジル人は、五輪予選を兼ねる多くの大会から締め出されているのが現状だ。
ロックダウンのため、国内の予選会も思うようにできない。
ブラジルが日本に送る予定の選手の数はオリンピック約450人、パラリンピック約420人。
しかしこの規模の選手団を、日本に送ることはほぼ不可能だろう。
現在までに決まっているのはたった197人だ。
 現時点で、ブラジルの選手やコーチ、スタッフでワクチン接種ができた者はひとりもいない。
何か特別な措置を講じない限り、これは6月になっても変わらないだろう。
1000人近い選手が日本に行くなら、コロナに精通した医師団も必要だろう。
しかし医師の足りないブラジルから、彼らを五輪のために奪うのか。
 これが大会120日前のブラジルの現状である。
(https://news.goo.ne.jp/article/sportiva/sports/sportiva-0000092485.htmlより引用)

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