駆除したシカやイノシシを肉食獣の餌に 動物園で「地産地消」 2021-04-02


図 この記事のタイプ傾向 (「注意」「大事」「期待」)

(https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20210401k0000m040428000c.htmlより引用)
 農業被害を防ぐため捕獲された野生のイノシシやシカなどを餌として与える取り組みを全国の動物園に先駆けて始めた大牟田市動物園(福岡県大牟田市)の元飼育員らが、地元で捕獲された野生動物を地元の動物園で与える「地産地消」を提唱している。
害獣として捕獲される動物は年々増加しているが、大半が廃棄されており「命をつなぐ」取り組みとして注目される。
 「獣害問題は全国各地で起きているが、やむを得ず捕獲しても非難され、処分するにも費用がかかる。
餌として与え、次の命につながる仕組みができれば捕獲する人の心理的な負担も軽くなる」。
大牟田市動物園の元飼育員らが設立した団体「ワイルドミートズー」(福岡市西区)の代表を務める九州大の細谷忠嗣(ほそやただつぐ)准教授(48)=生物多様性科学=は語る。
 農林水産省によると、2019年度の野生鳥獣による農作物被害額は158億円。
ただし10年度(239億円)に比べれば34%減った。
国などが対策を強化し、被害の6割を占めるシカとイノシシを中心に捕獲を進めてきたからだ。
環境省によると、シカの捕獲数は00年の14万頭から19年は60万頭に、イノシシは15万頭から64万頭にそれぞれ増えた。
 一方、細谷准教授によると、捕獲されたシカやイノシシのうち、ジビエ料理向けなどの食肉として流通するのは1割程度にすぎない。
とりわけ30キロ以下の個体は、加工しても食用の肉が少量しか取れずコストが合わないため、大半が廃棄処分される。
 そうした中で注目されるのが大牟田市動物園が17年に始めた「屠体(とたい)給餌」と呼ばれる取り組みだ。
肉食獣は本来、獲物を仕留め、皮をはいだりしながら時間をかけて食べる。
海外の動物園では近年、飼育環境をできるだけ野生に近づける「動物福祉」の考え方が広がっており、害獣として駆除された動物を骨や皮付きの状態で与える屠体給餌もその一環だ。
 20年3月まで大牟田市動物園の飼育員だった伴(ばん)和幸さん(34)は屠体給餌で動物のストレスが軽減されたという海外の論文を読み、獣害問題に取り組む細谷准教授らに相談。
福岡県内で駆除されたイノシシやシカを調達するルートを確保し、ライオンやトラなどの大型肉食獣に定期的に与えてきた。
さらに、細谷准教授と伴さんらは全国の動物園などに広めるため、17年にワイルドミートズーを設立。
これまで北海道から沖縄まで14カ所の動物園、水族館が計70回、屠体給餌を実施した。
 課題はコストだ。
衛生的かつ安全に野生動物を加工する専門の処理場は、国内には福岡県糸島市にしかない。
処理費用に各地への冷凍輸送の送料を加えると、動物園が普段与えている最も安価な餌の10倍になる。
だが仮に、全国に処理場ができれば送料のコストは下がり、価格競争が起きることも期待できる。
そこでワイルドミートズーは、独自に考案した低温加熱殺菌処理などの方法をまとめたマニュアルを作成し、今年1月、団体のホームページで公開した。
 マニュアルには▽専門処理場での適切な処理の流れ▽実際にライオンなどに与える際の注意点▽来園者への適切な公開方法――などを盛り込み、屠体給餌に取り組んでいない動物園からも「マニュアルを使って実施してみたい」との声が寄せられているという。
 伴さんは4月から動物研究員として勤めている愛知県豊橋市の豊橋総合動植物公園でも、屠体給餌に取り組む予定だ。
「各地で処理場の設置が進み、屠体給餌に取り組む動物園が増えることで、地域の獣害問題の解決にもつながる」と期待。
さらに、屠体給餌の場面を来園者に公開することが「獣害問題の啓発や命を大事にするという教育的なイベントにもなる」と話している。
(https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation/mainichi-20210401k0000m040428000c.htmlより引用)

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